◎伝馬舟の櫂をつくる
和船で使われる櫂にはいくつか種類があり、車櫂(オールに似る)や小櫂(パドルに似る)といったものがありますが、一般的な櫂は、T字にツクが取り付き、両手で扱う練り櫂です。御所浦でも櫂と言えばこれです。
練り櫂は、船尾に取り付けたカイビキと呼ばれる輪を支点にして漕ぎます。一人前に漕げるようになるまで「櫓3日、櫂3年」と言われるほど練り櫂の扱いは難しいのですが、櫓ではできないゴスタン(後進)ができ、転回も容易で、とても小回りが効きます。このことから、運搬船のはしけ舟として使われた御所浦の伝馬舟では、本来は櫓よりも櫂が推進具として多く用いられていました。
櫂は堅いカシの材が適しているそうですが、今回は櫓のウデの材と共用で、シイ材から新造をしました。昔は材が貴重なので、折れた櫓から櫂をつくることもあったそうです。
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櫂も荒木さんが新造しました。寸法の参考にした櫂は、牧島で父親が運搬船業をしていた若木浩一さん(昭和45年生まれ)から譲っていただいたもの。
櫂の製作の様子@
丸挽きした1寸8分の厚さのシイ材を使います。ほぼ丸ノコで切り出せますが、軸とハの結合部分は手ノコで。
櫂の製作の様子A
櫂のサイズは、実際に使われていた櫂を基に、長さを7尺、軸の直径を1寸8分、ハの幅を4寸としました。
櫂の製作の様子B
数本まとめて、効率良くつくります。
櫂の製作の様子C
墨付けをし、電気カンナで櫂のハを削り出していきます。
櫂の製作の様子D
軸にも墨付けをし、ノミと電気カンナで角を落として丸くしていきます。
櫂の製作の様子E
櫂の軸に対し、T字に接合するツクは約50cm、太さは強度と握り易さから端の方を少し細くつくリ、中央5cm、端3.5cm。軸とツクは、ボンドも使った上で、割りクサビホゾで緊密に組みます。
櫂の製作の様子F
最後に電気ヤスリで仕上げます